古代文字とロハス  文字から読み解く古代人の生活や自然観は現代の我々にヒントを与えてくれる。吉川まみの連載コラム。

「宮」 伊勢神宮の循環型システム

画像:古代文字「宮」
文字の意味:室の相連なる宮の平面図をあらわす文字(甲骨文)。祭祀や儀礼の行われる室をしめす。

伊勢神宮の「式年遷宮」

 三重県伊勢市にある伊勢神宮。
“お伊勢さん”。地元の人々は伊勢神宮を、親しみをこめてこう呼んでいて、お正月、お伊勢さんに初詣に行かないと年が明けない・・・などという言葉を多くの人が口にします。伊勢の町並みは、軒先を伊勢神宮に向かわないように建てられていて、これは、伊勢神宮に対して敬意を払ってのことだそうです。

 伊勢神宮の公式ウェッブによると、名称は「神宮(じんぐう)」で、古くは伊勢太神宮(いせのおおみかみのみや)ともいったそうです。
伊勢神宮は、「内宮」と呼ばれる「皇大神宮」と、「外宮」と呼ばれる「豊受大神宮」からなり、「内宮」には天照大御神(あまてらすおおみかみ)が、「外宮」には豊受大御神(とようけのおおみかみ)がおまつりされています。豊受大御神は、日本人の主食であるお米をはじめ、衣食住の恵みを与える産業の守護神なんだそうです。伊勢神宮の「衣」「食」「住」、神様にお供えされる「衣」神御衣(かんみそ)と、「食」神饌(しんせん)、「住」神宮の建築(唯一神明造・ゆいいつしんめいづくり)はすべて自給自足でまかなわれています。

 紀伊半島の豊かな自然環境の中で、多くの人々の心をこめたご奉仕によって、「食」は毎日、「衣」は季節ごと、「住」は20年に一度ととのえられます。「衣」「食」「住」さまざまな恵みへの感謝の祈りは、「恒例祭」「臨時祭」などの祭祀を通じてささげられていますが、20年に一度、最も重要なものとして行われるのが「式年遷宮」です。
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 伊勢神宮の内宮・外宮ともに、それぞれ東と西に同じ広さの敷地がありますが、遷宮とは、新しいお宮を造って、そこに祀ってある神様にお遷りいただくということだそうです。式年とは定められた年を意味していて、20年ごとに同じ形の社殿を交互に新しく造り替えられます。20年というのは、宮大工さんの人材育成や、木が育つのに必要な年月だとも言われています。約1300年前に第40代天武天皇が定めて、次の第41代持統天皇の4年(690)に第1回目が行われたという長い歴史のある祭祀。戦国時代には一時中断されたものの、20年に一度繰り返されて、平成25年には第62回目の御遷宮が行われます。「式年遷宮」では、建て替をした際に出される古いお宮さんの材木は、全国の神社の修理や改築、増築に再利用されるというです。

伊勢神宮の循環型システム
人類は古来、衣食住すべてにわたる恩恵を自然から享受してきました。
神宮では将来を見越して、宮域林に毎年植樹をして美しい森を育てています。この山から流れる清水は、参拝者の心を癒し、神宮神田の稲を育て、御園の野菜を育てています。そして海にそそいで豊かな海藻類や魚類を育って、そして御塩として精製されるのです。
神宮では天地自然への恩恵を、さながら神々へのおまつりを通して今日まで大切に守ってきました。自然を大切にし、そして無駄なく活用してゆく「循環型システム」が、神宮では今日も息づいていま。
(伊勢神宮式年遷宮広報本部発行パンフレット「日本の源郷伊勢神宮」より)
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「京」 北京オリンピックと古代文字

画像:古代文字「京」
文字の意味:アーチ型の門の形で、上に望楼などの小楼を設けてある形。これを軍営や都城の入り口に建てたものを京観という。

「京」という文字は、むかしは望楼のある門のことでした。この「京」を軍営や都城の入り口に建てて護衛にあたった軍事的なものが、だんだん都城全体を指すようになり、「京」が“みやこ”を意味するようになったと考えられます。日本では“京の都”、東の都・東京とか…。土地の名前をよくみると、漢字のもともとの意味が、その土地の昔の姿を伝えていたりします。
例えば“津”。“津”にはサンズイがついていますが、もともとは“港”を意味するものでした。“焼津”とか“摂津”とか、地名に“津”が付いていたら、そこはもともと港として栄えたところだったはずです。

「北京オリンピックの競技シンボルマークは古代文字」
中国の“京”、都は北京。この夏は第29回夏季オリンピックが開催されます。中国で初めて開催される北京オリンピック(Games of the XXIX Olympiad Beijing 2008 )です。(22の新設会場を含む37会場で8月8日から8月24日まで開催予定)
北京オリンピックのエンブレムには「京」という文字が躍動する人のようにデザインされ篆刻芸術で表現された「印章」が選ばれました。「中国の伝統文化の中からどのような要素を取り出してこの祭典を表現するか。私が思いついたのは書道だった。中国文化を代表する漢字を用いて造型することだ。そして文字を載せる媒体は、中国の伝統ある印章でなければならない。」とは、このエンブレムをデザインした人の言葉です。
また「北京五輪の各競技のロゴマーク」(競技シンボルマーク)は、甲骨文字や金文をもとにデザインされています。

北京オリンピックのスローガンは「同じ世界、同じ夢(One World One Dream)」ちょうど甲骨文字のふるさと「殷墟」はユネスコの世界文化遺産にも登録され、スポーツを通じての東西文化の交流、世界が1つになるというコンセプトにぴったりだなと思いました。
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ミャンマーのサイクロンや、四川大地震など、立て続けに災害が起こり、暗いニュースが続いています。被災地の人々の暮らしが一日も早く回復し、無事に北京オリンピックが開幕し、多くの人々に生きる力と希望をもたらすことを願いたいと思います。

「北京五輪の“環境シンボルマーク”・エコ設計の会場」
“緑色オリンピック”といわれる北京オリンピックにはた“環境シンボルマーク”なるものもあります。
マークのデザインは、こちらも書道の毛筆の筆跡。
“人が幹になった、天まで届く樹木をイメージしたデザインは、人と自然の調和ある統一を象徴している”そうです。

みなさん、「エコ設計」ということばをきいたことがありますか。「エコ設計」には決まった定義はありませんが、製造・使用過程で環境負荷の低減や、後のリサイクル・再資源化などの処理の容易性など考慮したうえで開発・設計する手法をいいます。
ほかに、エコデザイン、「環境適合設計」などと呼ばれることもあります。具体的には、太陽エネルギーなどクリーンエネルギーの利用(石炭燃焼ボイラーの不使用)、毒性のない環境配慮型の建築材料の使用、最良のゴミ処理技術、塩ビの使用削減、エアコンへのフロンの不使用、水の再利用など、さまざまな配慮があります。


「家」 エコハウス

画像:古代文字「家」
文字の意味:建物をあらわすウ冠の部分と、犬の象形からなる文字。

 甲骨文字の時代、「家」という文字は、神霊を祀る所をあらわしました。建物をあらわすウ冠のなかに「犬」の象形があるのは、神霊を祀る儀礼のときに犬を犠牲としてささげていたからなんだそうです。

 「家」にまつわる儀礼で、日本で今でも身近に行われているものに「地鎮祭」と「上棟式」があります。「地鎮祭」とは地主神を鎮めるとともに家の繁栄と工事の無事を祈る儀式のことをいいます。「上棟式」とは、建物の守護神と匠の神を祀って、棟上げまで工事が終了したことに感謝し、無事、建物が完成することを祈願する儀式で「棟上げ」(むねあげ)、「建前」(たてまえ)ともいいます。
古代中国で先王の神霊を祀る儀礼と、土地や建物の守護の神さまを祀る日本の儀礼とは少し意味合いが違いますが、いずれにしても、いまだに廃れることなくおこなわれている儀礼に、古代の心象風景が垣間見られるような気がします。

 30年ほど前に両親が家を建てかえ「地鎮祭」と「上棟式」を体験しました。ちょうど高度経済成長期で、新しく切り開いた土地に洋風2階建てのこぎれいな建売住宅並ぶ“団地”がどんどん増えていったころでした。団地の名前も、“希望が丘”とか“朝日が丘”とか、どこもきれいな名前がつけられていきました。当時私は小学生、兄は中学生。私たちはたくさん迷った結果、同じ場所に和風の木造住宅を建てなおすことを選んだのですが、今思えばそれが家族の一生忘れられない一大イベントとなりました。父と兄は毎晩設計図を書いたり、建材のことを調べたりしていました。母と私はカーペットや壁紙の見本を見たりしていました。みんなで風水や方角や占いを気にしながら、家族の新しい住まいづくりに毎日わくわくしていたものです。

 あのころ、エコロジーという言葉も思想もまったく耳にすることはありませんでしたが、私たちの家を設計してくれた方は、とてもエコロジカルでした。時間がたった後、建物がどうなっていくのかということや、飽きの来ない色調や、風通しや採光のことなどにこまかく気を配っているのが子どもだった私にもわかりました。おかげで30年以上たった今も家は元気です。
地鎮祭や棟上など、印象に残った行事もいろいろありましたが、一番思い出深いのは、祖父が山で育てた杉の木の皮を屋根に敷いた日のことです。杉の皮は、雨漏りを防ぎ、夏の暑さや冬の寒さをやわらげる役目をしているそうですが、そんな機能以上に、長い時間かけて育てられた木の皮が屋根を覆ったとき、なんだかものすごく大きな力に守られたような安心感を感じました。木は、長い年月をかけて、陽の光や水や土からの自然の恵みを凝縮したようなものです。その木が育つのに費やした年月の間、こんどは人の暮らしを守ってくれるのだと思いました。

「エコ・ハウス」
環境省は、衣・食・住生活を通じて家の中からできる地球温暖化防止対策「うちエコ!」を推進していますが、例えば、日本の家庭で使用されているすべての白熱電球(約1億1,600万個)を“エコ製品”の電球形蛍光ランプに替えたとしたら、1年間に約200万トンものCO2を削減することのだそうです。
「エコ・ハウス」(エコロジーハウス)とは、「地球にやさしい」「まわりの環境と親しむ」「健康で快適であること」という3つの考え方に基づいた考え方に基づいて建築された住宅のことで、「環境共生住宅」、「環境負荷低減住宅」などともいわれます。具体的には、太陽エネルギー、風力や雨水の利用、省エネルギー設備やリサイクル資材・建材の使用、廃棄物の削減などがあげられます。
「家」は「住まい」ともいいますが、そこに“住まう人”があってこそ。いくら環境に配慮した家があっても、その中で暮らす人の心に“エコ心”がなかったら、あまり意味はありません。“エコ心”というのはきっと、古くから中国や日本で見えないものを祀ってきたように、見えないものを思うその心と通じているのだと思います。

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